看護教育DXで未来の看護師を育てる ― 七尾看護専門学校の挑戦 ―

取り組みの背景

 

少子化が進み、実習先での症例数や患児との出会いが限られる中、さらに能登半島地震の影響で学習環境そのものが揺らいだ私たちの現場。
それでも、七尾看護専門学校は「学びを止めない」ために、一歩を踏み出しました。

 

「手書きの記録で疲弊する学生」「臨床現場との距離」「教材が手元にない避難所生活」
このような過酷な状況の中でも、学生の成長を支えるために、私たちは教育の質を落とさず、むしろ高めることを目指しました。

 

厚生労働省のDX事業に採択されました

 

七尾看護専門学校は、令和6年度 厚生労働省「看護教育のDX促進事業」に申請し、全国で限られた採択校の1つとして選ばれました。
この制度を活用し、教育機器を導入。
地元・能登の未来を支える看護人材育成を、デジタルの力で進化させることを目指しました。

 

DXの柱となった5つのツール

 

  1. Google Classroom
     課題の配布・提出・評価を一元管理。学生とのやりとりがスムーズに。

  2. 教育用電子カルテ(Medi-eye)
     模擬事例を活用し、病期ごとのアセスメントが可能に。

  3. 高機能小児用シミュレーター
     リアルな症状・反応を再現。小児看護を"体感"できる演習を実現。

  4. 動画記録ツール「ふりかえ朗」
     自分の演習動画を見ながら、客観的な振り返りとチーム学習が可能に。

  5. 電子黒板(エルモボード)
     発表や共有が活発に。視覚的にわかりやすい授業へ進化。

実感できた成果

 

  • 📉 記録作成時間が平均4.9時間短縮

  • 🧠 事例アセスメントが「充実した」と感じた学生は約7割

  • 📚 紙資料の削減率 約99.6%

  • 👶 2歳児への対応に「自信あり」と答えた学生が約2倍に

  • 🗣 「実践感がある」と感じた学生は8割

現場の声から

 

「リアルな患者との関わりを体験できるので、自信がついた」
「記録の書き直しが減り、学ぶ時間に集中できた」
「紙が減って、教員も学生も“探す時間”が減った」

 

教職員も「成長」するDXへ

 

ICT機器に不慣れだった教職員も、毎日触れる環境を整えることで習熟
iPadの支給・Wi-Fi整備・研修の実施により、「自信をもって使える教員」が増加しています。

教育と業務の「見える化」で、学生・教職員双方の満足度UP

さらに「働きやすく」「教えやすい」学校づくりを目指してDXを進化させます!

 

教育の未来へ

 

DX導入はあくまで「手段」。
私たちが目指すのは、地域の命と暮らしを守る看護師の育成です。
地震や人口減少という困難の中でも、学生がどこにいても安心して学べる環境づくりを続けていきます。

 

さらに詳しく知りたい方へ

七尾看護専門学校が取り組んだDX促進事業計画は、こちらにも掲載されています。

👉 公式資料はこちら
📄 看護教育におけるDXハンドブック(厚労省)

 


教育現場でDXを進めたい方、導入事例を探している方はぜひご参照ください。

 

ICT教員の挑戦と支え

DX化は、機器を入れただけでは成り立ちません。
本校ではICT担当教員と事務が中心となり、現場の「困った」に即対応し、教員も学生も安心して使える環境を整えました。

 

 ICTチームの取り組み

 

  • 学内ネットワークの整備(Wi-Fiの増強/同時接続対応)

  • 学生・教職員のGoogleアカウント発行と使用支援

  • 電子カルテやシミュレーター操作のマニュアル・動画作成

  • トラブル発生時の即時対応(PC不具合/クラウドの操作サポート)

  • 各教員へのICT活用研修の実施と個別フォロー

教員も、学生と同じように「学ぶ立場」から

ICTは、ただの技術ではありません。
私たちはこう考えました。

「学生が毎日教科書や道具を使って学んでいるように、教職員もICTに毎日触れて“道具の特徴”を知ることが第一歩だ」

そのため、教職員にもiPadを1人1台支給し、日々の会議・授業準備・情報共有の中で、自然にICTを使う習慣を育てています。

 

クラウドも毎朝の情報共有で活用され、使いながら学ぶ文化が根づいています。